変形性膝関節症を予防する!ストレッチと筋トレ方法
変形性膝関節症を予防する!ストレッチと筋トレ方法
膝関節は加齢に伴い多くの方が痛みを覚える部位の一つです。
中でも多いのが、歩くことを始め長年体重を支えてきたために骨やその周りの軟骨がすり減って変形してしまう「変形性膝関節症」による痛みです。
「歳だから」とあきらめている方も多いですが、日頃からきちんとケアをすることで予防したり、痛みを改善することができます。
そこで今回は、変形性膝関節症の原因と治療および予防についてご説明します。
変形性膝関節症とは?
「変形性関節症」は膝関節や股関節といった手足の比較的大きい関節から脊柱一つひとつの小さい関節まで起こるもので、加齢や関節への負荷の繰り返しにより徐々に関節軟骨が摩耗し、関節周囲に変形や炎症を起こす疾患です。
変形や炎症が強くなると関節痛や可動域制限、運動時の引っ掛かりなどの症状が発生します。
膝関節や股関節といった下肢の大きな関節は、歩行などで体重を受ける頻度が高いことから変形性関節症になりやすく、特に膝関節は曲げ伸ばしのみが可能な捻りに弱い関節であることからも関節に対して無理な負担がかかりやすいため、変形が起こりやすいという特徴があります。
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症が起こる主な原因をご説明します。
筋力低下
膝関節の周りには筋肉があり、関節を支える役割をしています。
加齢や運動不足により筋力が低下すると関節の支えが少なくなるため、関節にかかる圧が増し、摩耗しやすくなってしまいます。
関節への過度の負担
重量物を習慣的に持つ方や、歩行量が極端に多い方、スポーツ選手などで運動量が多い方は関節にかかる負担が大きいため、関節の摩耗が起きやすくなってしまいます。
膝関節周囲の筋力をつけることによってある程度補うことはできますが、負担が強いといくら筋力があっても補いきれない場合もあります。
骨密度の低下
加齢とともに骨密度は低下しやすくなります。
特に女性は閉経後に急激に骨密度が低下する傾向があります。
関節にかかる負荷が同じでも、骨密度が低下している場合には骨変形が起こりやすくなってしまうため、骨密度の低下も変形性膝関節症の原因となります。
変形性膝関節症の治療法
変形性膝関節症の治療は、手術によって関節を人工のものに置換する手術療法と手術は行わずそれ以外の治療法で痛みや関節可動域制限といった症状の改善を行う保存療法の二つに分けられます。
ここでは、手術療法と保存療法についてその内容をご紹介します。
薬物療法
薬物療法は、薬を使用した治療です。
最も多いのが痛みを緩和するために「痛み止め」と言われる「消炎鎮痛剤」を内服することです。
他にも、すり減ってしまった軟骨を少しでも取り戻すために関節に直接軟骨成分と同じヒアルロン酸を注射することなども行われます。
物理療法
変形性膝関節症に対する物理療法として行われることが多いのが、電気治療です。
低周波や干渉波、超音波など色々な種類があり、痛みや腫れの軽減や関節周囲の組織を柔らかくすることを目的として行います。
また、関節を温めて循環をよくしたり組織が柔らかくなることで痛みが軽減する場合には、ホットパックなどを使用した温熱療法や、炎症による痛みが強い場合にはアイシングを行う寒冷療法が有効になります。
運動療法
変形性膝関節症の大きな原因となる筋力低下を改善するために運動療法も有効な治療法となります。
下半身を中心としたトレーニングで筋力が増強したり、ウォーキングや自転車など軽めの運動を持続的に行って循環や関節周囲の組織の柔軟性が改善したりすることで関節への負担が軽減し、痛みや関節可動域が改善します。
手術療法
膝関節の変形が強く、上述したような保存療法を行っても膝関節の痛みが改善せず日常生活に強い支障をきたすような場合に、手術療法が検討されます。
手術は膝関節を人工関節に置換する方法なので、軟骨が摩耗して骨と骨の間が狭小化したり、骨が変形してうまく関節運動が起こらなくなったりしていた問題は解決します。
ただし、観血的療法になるので手術に耐えうる全身の体力があるかということや、その他手術の妨げになる疾患がないかということなどを配慮して検討されることになります。
変形性膝関節症の予防法
前述した治療により変形性膝関節症の症状が改善することはありますが、一度変形してしまった関節が元に戻ることはありません。
ですから、関節変形やそれに伴う痛みが起こらないようにするための予防が大切になります。
ここでは、変形性膝関節症を予防するための方法をご紹介します。
下腿三頭筋のストレッチ
下腿三頭筋はふくらはぎの筋肉です。
下腿三頭筋の柔軟性が増すことで足関節の柔軟性が高まります。
膝関節は歩行やジャンプなどで下肢にかかる衝撃を吸収する役割をしていますが、最も地面に近い足関節(足首)の柔軟性を高め、足関節でもしっかりと衝撃吸収をできるようにすることで膝関節に対する負担を減らすことができます。
- 壁など体重を支えられるような場所に両手をついて立ち、どちらかの足を一歩後ろに引きます。
- 後ろに引いた足はつま先が進行方向を向くようにまっすぐ置き、膝を伸ばした状態で踵が浮いてしまわないぎりぎりのところまで前に身体を倒します。
- ふくらはぎの筋肉に伸張感を感じながら、壁についた手に体重をかけて20~30秒静止します。
大腿四頭筋のストレッチ
重力に抗して体重を支える「抗重力筋」の中で膝関節に最も関係が深いのが、太もも前面にある大腿四頭筋です。
大腿四頭筋がしっかりと力を発揮して膝関節を支えるためにも大腿四頭筋の柔軟性は重要な要素です。
- 仰向けに寝て片側の足だけ正座をするように曲げます。
- 曲げた方の膝が外に開かないように注意して、ももの前側に伸張感を感じたらそのままの姿勢を20~30秒間保持します。
大腿四頭筋の柔軟性が低くこの姿勢が難しい方は、上半身を完全に倒さず肘を伸ばして手を身体の後ろについて上半身が斜めに起きているような姿勢で行っても構いませんので、慣れてきたら徐々に上半身を倒していきましょう。
大腿四頭筋セッティング
セッティングは太もも前面にある大腿四頭筋の中でもお皿のすぐ上内側にある「内側広筋」を特化して鍛えるトレーニングです。
内側広筋は大腿四頭筋の中でも弱くなりやすい筋肉で、この筋力が低下している方は立ち上がりや歩行時に膝関節を内側に捻りやすくなります(特に女性に多い動作です)。
このような動作を続けると膝関節に対する捻りの負担が少しずつ積み重ねられ変形につながりやすくなるので、内側広筋をしっかり鍛えて正しい膝の使い方をすることが大切です。
- 床の上で両足を前に伸ばして座り、鍛えたい方の膝の下にバスタオルなどを丸めて敷きます。
- 膝の下に敷いたバスタオルを膝の裏でつぶして踵を持ち上げるような感覚で膝を思いっきり伸ばして、大腿前面に力を入れます。(このとき、膝を伸ばした方の足首はできる限り起こしてつま先は真上を向けること、手で内側広筋を触り収縮を確かめながら行うことが重要です。)
- 数秒間内側広筋が収縮し続けた状態を感じられたら力を抜き、また収縮させることを5~10回繰り返します。
スクワット
スクワットは下半身を支えるために必要な筋肉を総合的に鍛えるトレーニングです。
正しいフォームで行うことで一度に必要な筋肉全てを鍛えられるというメリットがあるほか、膝を捻らないための動作練習にもなるため、変形性膝関節症予防には大変効果的です。
- 足を骨盤の幅に広げ、両足を平行にしてつま先が進行方向を向くかやや外向きにします。手は身体の横に自然に置いておくか、頭の後ろに組む、もしくは腰の後ろで組むようにします。
- ゆっくりと股関節、膝関節を曲げて重心を落としていきます。
- 太ももが床と平行になる程度まで重心が下がったら、ゆっくりと開始肢位まで戻ります。
スクワットは運動強度が高いトレーニングになります。
太ももと床が平行になるところまで腰を落とすことが難しい場合は、浅いスクワットから始めて徐々に深くできるようになっていただければよいと思いますので、最初から無理をしないように注意してください。
おわりに
今回は、変形性膝関節症について原因や治療法、予防法についてご紹介しました。
ご紹介したストレッチや筋トレは予防としてだけでなくすでに痛みがでている方にも効果的ですが、行う際に痛みがある場合には適応でない可能性ややり方が少し違っている可能性も考えられますので、専門家に直接指導をしてもらい、安全に行うようにしてください。